ホンダ ビート"E07A"エンジンについて
1998年の生産終了から20年近くが経とうとしているホンダ ビートですが、中古軽自動車の中でもまだまだ人気があります。
このページではそんな人気中古軽自動車ビートの"E07A"エンジンについてご紹介していきたいと思います。
E07Aエンジン
ビートのエンジンは専用設計ではなく、トラックのアクティーやトゥデイなどに使われていた E07Aをベースに メーカーによるチューニングを施し軽自動車の出力の自主規制値の上限である64PSを実現しています。
その主な手法としては圧縮比のアップ、ハイカム化、ビッグバルブ化、3連スロットルの採用、等長タイプの エキマニの採用などといった具合にNAエンジンの常套手段ともいえる方法でパワーを向上させています。
ビートのエンジンE07Aはメーカー保証で8500、ノーマルパーツの整理で9500、チューンドは10000回転以上回ります。
なぜこんなに回るのか?
あまり語られていない連桿比(れんかんひ)についてのお話です。
連桿比はクランク高とコンロッド有効長の比率です。 コンロッドの大端小端の距離をストロークの半分で割ります。 この値が大きいとピストンからからのパワーを直線的に取り出すことができ、抵抗が少なく回りやすくなります。
ビートのボアストロークは66mm*64mmです。多少ショートストロークではありますが、スクエアに近いディメンジョンです。 これに対してコンロッドの大端、小端中心の長さは119.7mmつまり119.7/(64/2)=3.74
E07A | 656cc | 66x64mm | 119.7mm | 3.74 |
これだけを見ても分かりづらいですね、比較してみましょう。
まずはホンダエンジン
ZC | 1590cc | 75x90mm | 137mm | 3.04 |
B16A | 1595cc | 81x77.4mm | 134.3mm | 3.47 |
B16B (98Spec.R) |
1595cc | 81x77.4mm | 142.8mm | 3.69 |
B18A | 1834cc | 81x89mm | 137mm | 3.08 |
B20A | 1958cc | 81x95mm | 142.75mm | 3.01 |
F20C | 1997cc | 87x84mm | 153mm | 3.64 |
F22C | 2156cc | 87x90.7mm | 149.65mm | 3.30 |
K20A | 1998cc | 86x86mm | 139mm | 3.23 |
そしてあのエンジン・・・
C30A | 2997cc | 90x78mm | 152mm | 3.90 |
C32B | 3179cc | 93x78mm | 152mm | 3.90 |
同じく軽スポーツカーのカプチーノとAZ-1に搭載のエンジンでは
K6A | 658cc | 68x60.4mm | 113.9mm | 3.771 |
F6A | 657cc | 65x66mm | 109.8mm | 3.327 |
Kエンジンの連桿比は大したものですね、さすがスズキです。
世界に目を向けて連桿比3.7オーバーを見てみると・・・
〇フェラーリ
206gt | 1987cc | 86x57mm | 124mm | 4.13 |
246gt | 2418cc | 92.5x60mm | 118mm | 3.93 |
308GTB | 2926cc | 81x71mm | 137mm | 3.86 |
328GTB | 3186cc | 83x73.6mm | 137mm | 3.72 |
F430 | 4306cc | 92x81mm | 150mm | 3.70 |
California | 4297cc | 94x77.4mm | 150mm | 3.88 |
458 | 4499cc | 94x81mm | 150mm | 3.70 |
フェラーリもさすがです。
〇ポルシェ
911(2.0) | 1991cc | 80x66mm | 130mm | 3.94 |
997GT3前期 | 3600cc | 100x76.4mm | 131mm | 3.43 |
ポルシェはナロー時代以降はあまり芳しくありません
〇BMW 直60
M06 | 2494cc | 86x71.6mm | 135mm | 3.77 |
M20/B25 | 2494cc | 84x75mm | 135mm | 3.60 |
M50/B25 | 2494cc | 84x75mm | 140mm | 3.73 |
S54/B32 | 3246cc | 87x91mm | 139mm | 3.05 |
BMWはエンジン屋らしく連桿比が高めですね。
E46M3搭載のS54はこれで9000回しているところが凄すぎます・・・
さて、ここまで見てきてE07Aがいかにレベルの高い連桿比を持っているかご理解頂けたかと思います。 さらによく見て頂くと・・・そうです、連桿比3.7を超えるエンジンでボアストロークが0.9以上の スクエアなエンジンは他にはありません!! 3.6でB16BとF20C、ホンダエンジンでリッターあたりの馬力ワンツーを飾る 名だたるハイチューンユニットがスクエアに近いディメンジョンを持つのみです。 他のエンジンは軒並みショートストロークエンジンなのです。 つまりビッグボアなわけですが、ボアが大きいとそれはそれで首振りなどエンジンが回りたがらない原因を生んでしまいます。
というわけで、ほぼスクエアのボアスト比で連桿比3.74
これがE07Aを天井知らずに回る名機たらしめた最大の理由でしょう!!
余談にはなりますが・・・
ビートを永く大切に乗りたいとお考えの方も多いでしょう。 ビートのエンジンは元々、オイル交換さえしていれば致命的にエンジンブローすることがない非常に頑丈なエンジンです。
ですが「最近どうもパワーが出ない」「エンジンブレーキ時に白煙を噴く」「打音がする」 などの症状がでてきたら、そろそろオーバーホールのご検討の時期かもしれません。エンジン本体における出力低下の要因は圧縮出力の低下と密接です。この原因の多くはバルブの密着不良、ピストンリング・シリンダーの摩耗がほとんどです。 一般的に経たりと呼ばれるものです。内燃機において、いかにたくさんの混合気を燃焼室に送り込むかが課題です。 燃焼室に入った混合ガスが上や下から漏れていたのでは話になりません。 安価に抑えるのであればピストンリングとバルブシートの修正を行えばある程度回復はしますが 【費用半分、効果半端】になりかねません。
せっかくならオーバーホールをおススメします。
エンジン本体ではありませんが、イグニションコイルや燃料フィルターも意外と盲点です。 比較的メンテナンスを気にしている車でもこれらが手つかずの場合が多いです。致命的に壊れる部品ではありませんが、確実に劣化するものです。特にコイルは新品でも性能ギリギリで作られているので、これを交換するだけでパワーアップしますよ。