バブルに咲いた軽の花「ABCトリオ」

2020/06/23 ブログ

「バブル」というと、ボディコンを身にまとった女性が扇子を振り回して踊るジュリアナ東京をイメージする人も多いかと思いますが、実はジュリアナ東京が誕生した1991年はバブル崩壊が始まった年なのです。

 

経済は右肩上がりが当然と考えられていたバブル真っ最中に計画され、やっと陽の目を見たと思ったらあっという間に泡と消えた存在は軽自動車にももちろん存在します。

 

それが「ABCトリオ」と呼ばれる3台で、レイズの看板車種ともいえる3台です!

このトリオですが、今の軽自動車を語るうえでもかかせない、知っておきたい3台なのです。

AZ-1】

マツダ・オートザムAZ-1

ガルウイングを備えた軽のスーパーカー

 

車名にあるオートザムとは、クルマがバンバン売れたバブル期にマツダが増やした販売系列(ディーラー)のひとつです。ちなみに、オートザムではイタリアのランチア(デルタやテーマなど)も販売しており、まさにバブリーなディーラーだったのです。

 

そんなAZ-1ですが、バブル絶頂期を迎えつつあった1989年の東京モーターショーでのお披露目を経て、バブル崩壊が始まっていた1992年9月に販売が開始されました。カモメの翼という意味のガルウイングを備えた唯一の軽自動車です。

 

2人乗りで5速MTのみ、スズキ製のエンジンをシートの後に置き、後輪を駆動させるミッドシップレイアウト。

 

東京モーターショーの時点ではラリーカーやレースカーなどのボディの着せ替えも検討されていましたが、コスト面などでの事情でなくなってしまったようです。それでも当時としては高価な軽自動車となり、バブル崩壊のあおりを受けてわずか3年後の1995年5月に生産終了となりました。

BEAT】

ホンダ・ビート

NSXを手軽に…軽初のミッドシップ2シーターオープン

 

1990年に登場したNSXに続くように、1991年5月に登場したのがホンダ・ビートです。NSXと同じくエンジンをシートの後に置き、後輪を駆動させるミッドシップレイアウト、しかもオープンカーとなると軽自動車では初となりました。

 

2人乗りで5速MTのみ。ちなみに、本田宗一郎が最後にその完成を見届けた四輪車だといわれています。

 

当時はNSXやトヨタ・スープラ、日産・スカイラインGT-Rなど280馬力スポーツカーの全盛期でした。そんな280馬力マシンと同様にビートは前後でタイヤサイズを変え、前輪が13インチ、後輪が14インチ。そして、後輪のディスクブレーキは軽自動車用ではなく、当時のプレリュードから流用されました。

 

軽自動車の業界自主規制である64馬力をほかの多くの軽自動車がターボを使って絞り出していましたが、ビートはF1などの知見を活かしてノンターボで実現しています。さらに、エアバッグも軽自動車として初めて用意するなど、いたるところに今につながる革新的な挑戦がなされた名車なのです。

とはいえバブル崩壊にはあらがえず、1996年に生産が終了しました。

Cappucino】

スズキ・カプチーノ

軽自動車のプロが放った、クーペにもオープンにもなる変則スポーツカー

 

スズキはアルトやジムニーなど、長年にわたって軽自動車を作り続けている、いわば軽自動車のプロです。世の中がバブルで浮足立つ中でも軽自動車の可能性を研究し続けていたのです。

 

その成果を2シーターオープンカーとして披露したのは、マツダがAZ-1を披露したのと同じ1989年の東京モーターショーでした。

 

ショーで好評だったことを受け、1991年11月に発売されたカプチーノ。市販モデルではクーペにもタルガトップ(頭上のルーフのみ外せる)にもフルオープンにもできる特殊なルーフ機構を備えました。

また、レースカーで使われるダブルウィッシュボーン式サスペンションを軽自動車で初めて採用したり、当時ラリーで活躍していたアルトワークスのエンジン(AZ-1にも供給)を搭載するなど、走りの性能も徹底的に追求されていました。

 

ABCトリオの中では唯一マイナーチェンジを行うなど、3台の中では一番長く販売が続きましたが1998年に生産が終了しました。

受け継がれるABCトリオの夢

 

最も明確に後継モデルとして登場したのはホンダ・S660(2015年登場)でしょう。ミッドシップ2シーターオープンカーであったビートのDNAを継承しています。

 

現在マツダは軽自動車の製造を行っていないので、AZ-1の復活は厳しいだろうとの見方が強まっています。また、カプチーノ復活の噂もあるものの実現はそう簡単ではないようです。

 

しかし実は、AZ-1やカプチーノの意思を受け継いだかのような軽自動車があるのです!

それはダイハツ・コペン。2002年に登場した初代は2人乗りオープンカーで、カプチーノ同様FR(エンジンをフロントに載せて後輪を駆動させる)車で、さらにはカプチーノのようにクーペにもオープンカーにもなるのです。さらにはさらには電動です。笑

そして、2代目コペンではAZ-1が断念した着せ替えまで実現しました。

 

 

これから先、もしかしたらABCトリオの夢を継ぐあらたな軽の名車が現れるかもしれません。

日本が誇るマイクロカーはどこまで進化していくのか、注目していきたいと思います。

番外編:もうひとつのC

 

ABCトリオの中で唯一AZ-1のみにOEMが存在します。

それがスズキ・キャラです。キャラはAZ-1発売の翌年93年、スズキから登場しました。

 

フロントフード前端のエンブレムがスズキの「S」になり、リヤパネル中央に「CARA」と車名が入っているのがAZ-1との違いになります。

 

ですが、それ以外にも相違点がありますので少しご紹介していきます!

 

まずはフロントマスクです。AZ-1とキャラではそもそもバンパー形状が異なっていて、キャラは両サイドに角型フォグランプが標準装備されています。

オーナーがAZ-1にキャラのフロントバンパーを移植したりしていない限り、ここが外装における最大の識別点になるかと思います。

ちなみに、AZ-1では純正オプションで丸型フォグランプが用意されていました。当然、後付け感満載ですのでレーシーな雰囲気を好む方には向いていると思いますが、スマートにフォグランプを装着しているという点ではキャラの方が圧倒的にまとまり感があると言えるでしょう。

 

リヤ周りにもひと目で違いが分かるディテールがあります。バンパーの下、マフラーメインサイレンサーを隠すように装着されているスチール製プレートです。キャラはそこが単純にスリット処理されているだけですが、AZ-1は「AUTOZAM」の抜き文字処理が施されています。