自動車のトルクとは?! 分かりやすく解説します
エンジンと聞くと馬力がどれだけ大きいかに目を向けがちです。しかし、馬力と同じくらい大切な要素としてトルクがあります。
最高出力(馬力)と最大トルクとがありますが、きちんと理解できていますか?
今回のブログでは、トルクの定義や身の回りのトルクなどを紹介、実際の車のスペックなどと合わせてご紹介していきます。
トルクとは
例を挙げると、日産 GT-Rに搭載されているVR38DETTエンジンの主要スペックは、最高出力357kW(485ps)/6,400rpm、最大トルク588Nm(60.0kgf・m)/3,200-5,200rpmです。
トルクとは、固定されている回転軸を中心として生み出される力のことです。難しい言い方をすると、その回転軸周りの力のモーメントなどとも呼ばれています。
つまり回転軸を中心として力が生み出されているところにトルクありと言うわけでですが、エンジンにおいてその回転軸というのはクランクシャフトをさします。
トルクは自転車ペダルに例えると分かりやすい
トルクの算出方法は公式で示されています。その公式は次の通りです。
トルクN = r x F
この時、Fは物体に与えられる力を、そしてrは回転半径(回転軸と力の加わる部分の間の距離)を示しています。
トルクの説明をするときに頻繁に取り上げられるのが自転車のペダル運動です。
自転車を漕ぐとき、ペダルを左右交互に下方向に踏み込みます。すると、下方向に踏み込むたびに左右のペダルをつないでいる車軸に、回転させるねじり力が入ります。脚力のある競輪選手のような人が漕ぐと、車軸にはもの凄いねじり力が入りますし、力が弱く体重も軽い子供が漕ぐと、たいしてねじり力は入りません。
自転車のギア比が固定ならば、そのねじり力の大きさに応じて、自転車は前へと進みます。
この時、車軸からペダルまでの距離は18cm、ペダルが水平になったときに足で下方向に踏み込む力を30kgとすると、0.18[m]×30[kg]で、トルクは5.4[kgf・m]となります。
自転車は、このトルクがペダルを踏み込んだときにのみ働くので、車軸に最大トルクがかかったり、ゼロになったりを繰り返し、タイヤを回転させます。
一方、エンジンの場合は、燃焼室で爆発が起きる度にクランクシャフトに回転のトルクがかかり、トランスミッション(→FRの場合はプロペラシャフト)→デファレンシャルギア→ドライブシャフト等を介して、タイヤを回転させます。
エンジンにおけるトルク
人間が自転車を漕ぐ場合は、踏み込む力によってトルクが変わりますが、エンジンの場合は、回転数に応じて発生するトルクが異なります。
先ほどのR35 GT-Rの場合、最大トルク発生は3,200-5,200rpmとありました。これは、3,200rpmから5,200rpmで、最大トルクが発生することを示しています。
ちなみにrpmとは、回転毎分(英語:revolutions per minute)の略で、1分間に何回回転するのかを示した表記です。アイドリング時はだいたい600rpm程度ですが、それを1秒間に直すと10回転もしています。3,200rpmということは、その約5倍以上、1秒間に51回も回っているときに、最大のトルクが出るエンジン、ということなのです。
一般的にエンジン回転数が高まると発生トルクは増えていき、ある回転数でピークを迎え、その後は下降するというカーブを描きます。このトルクカーブが高い回転数(域)を使って走るほど、クルマの加速力は高くなります。
----出力を計算するために必要
エンジンにおけるトルクを考えますと、トルクは出力を計算するために必要な1つの要素です。数式で表しますと、次のようになります。
出力=トルク x 回転数(エンジンの)
エンジンで言うところの出力はkW(昔の表現なら馬力)で表現されていますから、高出力エンジンとなるかどうかを決定づけるひとつの重要要素となっているのです。
----トルクの単位について
トルクを表現する単位について触れておくと、JIS規格ではkgf・mという単位で表示されます。
国際単位系にあたるSIではN・mという単位での表示です。これは出力表示でも同じで、JIS表示はPS、SI表示だとkWとなっています。
なお、車種はなんでも良いのでエンジンスペックを一度ご覧いただくとわかると思いますが、現在は国産単位系のSIと、国内では昔から使われているJISの両方が表記されています。
----トルクのあるエンジンだと低回転から勢いがある
トルクのある(トルクの高い)エンジンを搭載した車に乗った時の実感としては、低回転からエンジンがよく回る・走り出しが良い、基本的に車が気持ちよく走るといったフィーリングを挙げることができます。
また、先ほど紹介した出力の算出方法をご覧いただくとわかる通り、トルクが高くなれば高出力になりますし、エンジンが高回転に対応していなくてもトルクで稼ぐことも(そしてその逆も然り)できるというわけです。
自動車のトルクの相場はどのくらい?!
R35 GT-Rの最大トルクは、60kgf・mと紹介しましたが、他のクルマはどのくらいなのでしょうか。代表的なスポーツカーから、あえてトルクだけを取り上げてみていきます。
トヨタ86=21.6kgf・m、ホンダNSX=65.9kgf・m、日産フェアレディZ(Z34)=38.1kgf・m、マツダロードスター=15.3kgf・m。
ちなみに海外メーカーの例だと、ポルシェ911=45.0kgf・m、フェラーリ812 スーパーファスト=73.2kgf・m、マクラーレン セナ=81.6kgf・m。
上には上がいますね。これらはエンジン単体でのベンチマーキングですので、クルマの加速力とは異なります。単純にいえば、重たい車だとトルクがあっても加速力は鈍りますし、軽い車ではトルクが小さくても速い場合もあります。
ガソリンエンジンとディーゼルエンジンのトルクの違い
周知の通り、エンジンにはガソリン燃料を用いるガソリンエンジンと軽油を用いるディーゼルエンジンの2種類があります。
一般的に、ガソリンエンジンは高回転域において高トルクを発生させ、それとは反対にディーゼルエンジンは低回転域において高トルクを発生させる、という異なる特徴を持っているのです。
別の言い方をすれば、ガソリンエンジン車は高回転で回すと気持ちよく走れますし、ディーゼルエンジン車は低回転から力強い走りを体感することができます。
最後に
今回はトルクというものについて、その定義や特徴などをご紹介しました。
エンジンというと馬力に目が行きがちですが、これからはトルクがどれくらいあるのかにも興味を向けてみるとその車のもつ特徴がより理解できると思います。
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