車検に通るホイールの保安基準とは
クルマのホイールはデザインのバリエーションも豊富にあるので、見栄えをかっこよくするためにカスタマイズしたいという方も多いです。
車検で検査の基準となる保安基準には、ホイールにも規定があります。市販のホイールは大きさや素材なども色々ありますが、特に輸入品の場合は保安基準を満たさないものがあるので注意しなければなりません。
車検を通すためにも、クルマの安全性を確保するためにもホイールの保安基準の内容を知っておくことが大事です。
今回のブログでは、ホイールの保安基準などをご紹介していきます。
ホイールの種類
ホイールには基本となるデザインの種類が4つあります。この4つのデザインを組み合わせる形で、さらに様々なタイプのホイールが販売されているのです。
では、4つのデザインを見ていきましょう。
----スポークタイプ
ホイールの中心から外径に向かって、細長い棒状のスポークが放射線にようにかけられているデザインです。軽くて熱に強く、熱を冷やす性質があるのが特徴です。
----フィン
スポークタイプのホイールよりもスポークが細く、本数がたくさんあるタイプのデザインです。スタイリッシュな見た目が特徴です。
----メッシュ
ホイールの中央と外径の間にスポークは網目状に配置されているデザインです。スポークが太く、目が粗いデザインは重厚感が出ます。逆にスポークが細く、目が細かいデザインはエレガントな印象を与えます。
----ディッシュ
ホイールの中央と外径が1枚のお皿のような面状になっているデザインです。とは言っても、面には隙間や穴が空いているのが一般的です。空気抵抗は少ないですが、重量が重いという特徴があります。
ホイールサイズ
自分のクルマのタイヤにあったホイールを選ぶためにも、ホイールのサイズの見方を知っておきましょう。純正のホイールはクルマの取扱説明書にサイズが記載してある場合が多いので、確認してください。
ホイール本体にも、例えば「15 × 6 1/2JJ 5 114.3 50」というようなサイズ表記があります。この表記の見方を解説します。
最初の「15」は、リム径と言って、ホイールの直径の大きさです。
次の「6 1/2」は、ホイールの幅をインチサイズで表してもので6.5と表記される場合もあります。
次の「JJ」は、ホイールにタイヤがはまる部分、フランジのサイズを示します。
次の「5」は、穴の数です。
次の「114.3」は、ボルト穴の中心線を結んだ時にできる円の直径です。
最後の「50」は、ホイールの幅の中心線から車体側の取り付け面までの長さを示しており、インセット(またはオフセット)と呼ばれています。取り付け面がホイールの外の場合はインセット、取り付け面がホイールの内側に来る場合はアウトセットと呼びます。
ホイールの規格
ホイールには国土交通省が定める安全基準を満たしたものに刻印される「JWL」という規格があります。衝撃試験や半径方向負荷耐久試験など各種ホイールの強度確認試験を行い、安全とされる耐久性や強度のあるホイールに認められている規格です。
純正のホイールはもちろん、社外品でも刻印がなされているはずです。「JWL」は主に普通車用のホイールの国産規格となります。
総重量3.5tより重い、最大積載量500㎏より重い貨物車は「JWL‐T」という規格です。総重量4.54t以下で定員が11人以下の乗用車は「SAE」の規格となります。
そして、メーカー表記の規格もあります。いずれかの規格がホイールに刻印されているはずなので、一度確認してみましょう。
車検に通るホイールの保安基準
車検は「次の車検まで問題なく走ることが出来るか」を検査するのではありません。あくまでも「現時点で安全に走行できる状態にあるのか」をチェックします。
そのため普段の走行に問題を感じなかったとしても、国が定める安全基準をクリアしていない場合は不合格となります。
一般的にはエンジンなどクルマの内部に関する整備不良や故障などが見つかった場合に不合格となるのですが、ホイールが原因で車検に通らないこともあります。
実はホイールに関しても厳しい保安基準があり、その基準をクリアしていない場合は不合格になってしまうのです。せっかくこだわりを持って購入したホイールなのですから、出来れば車検のためだけに取り換えるのは避けたいですよね。
----タイヤの外径が規定から外れるのはNG
タイヤの大きさも保安基準で決まっています。タイヤの大きさは、クルマの走行性能に深く関係しており、タイヤが大きいとスピードに乗りやすいので速く走れます。
逆にタイヤが小さい場合回転数を増やさないとスピードが出ないので、一般的に速度は遅くなるのです。タイヤの大きさが違いすぎると、運転席で確認するスピードメーターと実際の車の速度が違ってくるという問題が起こります。
車検ではスピードメーターが正確かどうかチェックされます。実際の速度とスピードメーターに表示される速度の誤差は決められた範囲内に収まっていなければなりません。
その誤差の範囲はクルマの製造年で分けられているので、注意しましょう。スピードメーターが40km/hを表示している時、2007年1月1日以降の製造のクルマは、実際の速度が30.9km/h〜42.55km/hに収まっている必要があります。
また、2006年12月31日以前に製造のクルマは、実際の速度は30.9km/h〜44.4km/hでなければなりません。純正品を社外品に交換する場合は、タイヤの外径が大きく違わないように注意してください。
----フェンダーよりタイヤやホイールがはみ出したらNG(ハミタイ)
タイヤの周りを囲うように取り付けられたパーツがフェンダーです。フェンダーからはみ出すようなサイズ、デザインのタイヤホイールは車検では不合格となります。
タイヤやホイールがはみ出していると、クルマとすれ違う際にフェンダーは触れなくてもタイヤやホイールが他のクルマに当たると接触事故になってしまうからです。保安基準では、ホイールの中心からフェンダーに向かって直線を引きます。
この直線は地面に対して直角でなけければなりません。直線から前へ30度、後ろへ50度の角度の範囲でホイールがフェンダーからはみ出しているとNGとなります。
----フェンダー等にホイールが接触したらNG
クルマを運転中、右左折する際などハンドルを切るとタイヤも動きます。この時、フェンダーにタイヤやホイールが触れると車検では不合格となります。
ハンドルが真っすぐな状態でタイヤやホイールがフェンダーからはみ出していなくても、ハンドルを切った際にはみ出してしまえば結局NGとなるので注意しましょう。タイヤが回転中にフェンダーに触れてしまうと回転に対する抵抗となり、タイヤがバランスを崩し、クルマはコントロールを失うことにもなりかねません。
また、ホイールが触れた場合も結局タイヤの回転、ハンドル操作の妨げとなります。結果的にクルマが進行方向に進むのを阻害することになり、交通事故のリスクが高まります。
タイヤの表面が傷つき、亀裂などが生じてバーストする可能性もあるので危険です。
----ツライチにしたい場合は車検基準に要注意
クルマ好きな方にとって、タイヤやホイールをカスタマイズする際、「ツライチ」にしたいという方も多いかもしれません。
ツライチとは?
タイヤやホイールの表面とフェンダーの外側がぴたりと一致しているという状態です。漢字では「面一」と書くことからも、タイヤやホイールが一つの面上にあることが想像できるでしょう。
通常は、タイヤやホイールはフェンダーの内側に収まっています。しかし、ドレスアップによりタイヤやホイールをフェンダーのギリギリのラインまで出すと、クルマのボディと足回りに一体感が生まれるのです。スタイリッシュな印象となり、スポーツカー仕様のようにかっこよく見えます。
しかし、ツライチにすることでタイヤやホイールが傷つきやすく、カスタマイズの仕方によっては外側に飛び出してしまい、車検に通らなくなる可能性があるので注意が必要です。
----傷や凹みについて
ホイールに傷がついている場合は、一部に凹みが見られる場合、軽微なものなら車検でも特に問題にならず合格するでしょう。しかし、大きな傷や深い凹みがあって車の走行の妨げになる場合は、車検に通らない可能性もあります。
凹みが大きく深いとタイヤの回転面に凹みが触れることもあります。そうなると、タイヤが回転して進行方向に進む際の妨げになり、ハンドル操作が効かず交通事故発生のリスクが高くなるからです。
また、ホイールが大きくゆがんでいる場合や割れている、大きなひび割れがある場合なども注意が必要となります。車検では、安全に走行できないと判断される可能性が高いです。
----国が定める規格であるか
日本独自の保安基準を合格していることを表しているのが、JWLおよびJWL-Tの刻印です。しかも国内で製造されているホイールのほとんどが、この保安基準をもとに設計されています。
ですから「国産ホイールである=JWL(JWL-T)の刻印がある)」と考えた方が分かりやすいです。国産のホイールは、車検の保安基準を満たしていることが前提にあります。
もちろんVIAで登録されているホイールの場合も、問題なく車検では通ります。でもほとんどのメーカーがJWLまたはJWL-Tの保安基準を参考にしていますし、国が定める保安基準の告示においても、「JWL(JWL-T)のマークがないと不適合となる」とハッキリと書かれています。
ですから結論から言えば、確実に車検を通したいのならJWL(またはJWL-T)の刻印されたホイールでないとダメだといえるでしょう。
----最大負荷能力(ロードインデックス)にも注意
タイヤの最大負荷能力、ロードインデックスというのは、1本あたりに耐えられる最大の負荷を数値化したものです。車検では、ホイールのロードインデックスがクルマに適した値であるかどうかも検査していきます。
タイヤのロードインデックスが低いということは、タイヤがあまり大きな負荷に耐えられないということです。ロードインデックスはタイヤによって異なり、タイヤの側面に記載されています。
例えばロードインデックスが80の場合、最大負荷能力は450㎏です。450㎏以上の重さとなったら、タイヤが負荷に耐えきれず、損傷やバーストを起こすリスクが高まります。
車検でも、タイヤのロードインデックスが基準を満たさないと不合格です。また、タイヤの空気圧もロードインデックスと関係しています。
空気圧が適正でないと最大負荷能力は十分発揮されないので、空気圧の管理が大切です。タイヤを社外品に付け替える場合は、純正タイヤのロードインデックスの値にも注意が必要となります。
----ホイールスペーサーをつけても車検に通る?
ホイールスペーサーとは、ホイールと組み合わせて使う部品のことです。
ホイールスペーサーには「クルマを安定して走行させる効果がある」「見た目がシャープに見える」というメリットがあるため、足回りのドレスアップや高速走行の安定性を高めるために取り付ける人も多いはずです。
ただしホイールスペーサーは、タイヤを外側に引っ張る働きをしています。つまり車検でNGとされるハミタイの状態を意図的に作っていることと同じなので、保安基準の範囲を超えて外側にはみ出してしまっている場合は車検に通りません。
もちろん基準の範囲内であれば、ホイールスペーサーがついていても車検を通すことは出来ます。
----平成29年6月22日以降に保安基準の改正
「ハミタイの状態では車検に通らない」と解説しましたが、平成29年6月22日以降に行われる車検においては「ハミタイでも車検に通ることがある」に変わります。
実は「回転部分の突出禁止規定」というものがあって、これまでは「一切突出してはいけない」とされてきました。そのためハミタイは車検に通りませんでした。
これに対して平成29年6月22日以降に施行される規定では、「10mm未満であれば突出していないと判断する」に変わったわけです。
だから10㎜以下のハミタイであれば、そのことが理由で車検に通らないということがなくなるわけです。
ただし注意点があります。保安基準改正の適用に以降も、外側にはみ出してよいのはタイヤのゴムの部分に限られます。つまりホイールに関しては、これまでと同じ保安基準が適用されます。
ですから保安基準が改正されたとしても、これまで通りの基準をクリアしていなければいけないのです。結論から言えば、「ハミタイでも車検に通る」という解釈は間違いです。
最後に
クルマのドレスアップや普段の走行レベルをアップさせるためには、どうしてもホイールにこだわってしまいます。でもそのことが原因で車検が通らなくなるケースもあります。
1発で車検を通すためにも、「クルマの足回りが本当に車検の保安基準をクリアしているか」確認するひと手間は大切ですよ!
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