ブレーキフルードとは?! 交換は必要なの?!
車検や定期点検のときに整備士に「ブレーキフルードの交換が必要です」と言われ、なんのことかわからず、困惑した経験はないでしょうか?
速い速度で走るクルマを制御するために、ブレーキは非常に重要な役割を担っています。
今回のブログでは、このブレーキを作動させるために必要不可欠な、ブレーキフルードについてご紹介していきます。
ブレーキフルードとは?!
普段の運転ではあまり意識しませんが、ブレーキペダルの重さは適度に踏みやすくなっています。
しかし、エンジンが停止している状態でブレーキペダルを踏んでみると、いつもより踏み込みにくいことがわかります。
これは、ブレーキが「油圧」と呼ばれる構造でドライバーのサポートをしているためです。ドライバーがペダルを踏んだ力を油圧の働きによって増幅させ、強い力を必要とせずにクルマの動きを止めることが可能となっているのです。
ここで重要な役割を果たしているのが、ブレーキの油圧に使われるオイル、ブレーキフルードです。
----ブレーキフルードの性質
ブレーキフルードの特徴的な性質として、以下の点が挙げられます。
・粘り気が低い
・体積の変化が起こりにくい
・-50度で固まらない
・200度でも沸騰しない
加えて、ブレーキフルードは空気中の水蒸気を吸い込む「吸湿率」が高い性質があります。ブレーキフルードが水分を吸うと、沸騰する温度(沸点)が下がり劣化するため、定期的な点検・交換が必要です。
ブレーキフルードは規格ごとに「ドライ沸点(新品状態の沸点)」「ウェット沸点(吸湿したときの沸点)」2つの沸点を表記しているので、クルマの使用環境に適したブレーキフルードを見極めて選びましょう。
----ブレーキフルードのタンクはどこ?!
ブレーキフルードは、「リザーバータンク」と呼ばれる半透明の容器に入っています。リザーバータンクはエンジンルームにあるため、ボンネットを開ければブレーキフルードの汚れ具合や残量の確認が可能です。
ブレーキフルードの種類と規格
ブレーキフルードには種類と規格があり、それぞれ異なる性質を持っています。ブレーキフルードを選ぶときに迷わないよう、何が違うのかを把握しておきましょう。
----ブレーキフルードの種類
グリコール系 | グリコールエーテルというアルコール系の成分を主剤にしたフルードで、一般的なブレーキフルードは、グリコール系を指し示す。 |
シリコーン系 | 沸点が高くレース車やバイク(ハーレー)など、ブレーキを酷使する車両に使われることが多い。ほかの素材との混用は厳禁。 |
鉱物油系 | 欧州車で使われる車両があったが、使用率は低い。 |
ブレーキフルードは、おもに「グリコール系」「シリコーン系」「鉱物油系」と3つのタイプに分かれています。
「グリコール系は一般車両」「シリコーン系はレース車」といった具合で、クルマの使用環境に応じて使い分けされているのが大きな違いです。鉱物油系のフルードを使う車両は少ないため説明を割愛します。
また、グリコール系の主成分は、グリコールエーテルと呼ばれるアルコール系の素材を含み、鉱油を使わないことから「非鉱油系フルード」という別称があります。対してシリコーン系は沸点が高く、過酷な走行下でも気泡が生まれにくい性質を持っているのが特徴です。
----ブレーキフルードの規格
ブレーキフルードには、「日本工業規格(JIS)」「米国連邦自動車安全基準(FMVSS)で定められたDOT規格」と2つの規格が存在します。一般的に認知されているのはDOT規格のほうでしょう。
ただし、DOTの認証を得ていないブレーキフルードは「DOT」の表記を使用できないため、純正品であっても「DOT3」を「BF-3」「NR-3」のように別表記で記すことがあります。どれが何かわらかないときは、正規ディーラーに直接確認するのが安全で正確です。
規格 | 主成分 | ドライ沸点 | ウェット沸点 | 使用用途 |
DOT3 | グリコール系 | 205度以上 | 140度以上 | 一般用途 |
DOT4 | グリコール系 | 230度以上 | 155度以上 | 一般用途~スポーツ走行 |
DOT5.1 | グリコール系 | 260度以上 | 180度以上 | 寒冷地やレース用途 |
DOT5 | シリコーン系 | 260度以上 | 180度以上 | ハーレーなど一部の車種 |
※ドライ沸点=吸湿率が0%の沸点
※ウェット沸点=吸湿率が3.7%時の沸点
DOTやJISといった規格では、ブレーキフルードの沸点特性を定めています。表を見てのとおり、規格の数字が大きくなるほど沸点温度が高くなるのが特徴です。ブレーキへの負荷が大きい車両ほど、規格の大きいブレーキフルードを選びましょう。
ちなみに、DOT規格に適合しているものであれば、一般車両にレース用途のブレーキフルードを使用しても特に問題はありません。
ただし、DOT規格に適合していないレース専用のものは注意が必要です。沸点を上げるために低温時の流動性が犠牲になっている場合が多く、低温時にABSがうまく作動しないリスクがあります。
ブレーキフルードが劣化するとどうなる?!
ブレーキフルードは、エンジンルーム内にある「リザーバータンク」と呼ばれる容器に入っており、そこから「マスターシリンダー」という部品を経由し4輪のブレーキへと繋がっています。ブレーキフルードは非常に吸湿性が高いため、長期間使用すると空気中の水分を液内に取り込んでしまい劣化します。
するとブレーキ機構は本来の性能が失われ、ブレーキが効きづらくなり、最悪の場合「ペーパーロック」と呼ばれる現象によってブレーキがまったく効かなくなってしまいます。
ブレーキの故障は大事故に直結しますので、オイルの劣化や漏れなどに対し、定期的な管理・メンテナンスが重要といえるでしょう。
ちなみに、原付をはじめ排気量250cc未満の車両にはブレーキフルードの交換が義務付けられていないため、メンテナンスを怠ると劣化に気付かないことがあります。排気量が小さい車両であっても、ブレーキフルードはとても重要ですので、日頃から注意を払うようにしましょう。
----劣化のサイン
ブレーキフルードの劣化状況は、リザーバータンクを覗いたときに「残量」「色(劣化具合)」で判断できます。
ただ、頻繁に覗き込むことは少ないと思うので、ブレーキを踏み込んだときに「フカフカする」「踏み心地が安定しない」といった感覚があるときは点検してみましょう。
ブレーキフルードの交換時期
ブレーキフルードを交換するタイミングは、車種や使用頻度、使用状況によって異なります。ただ、ブレーキフルードの存在を普段から気にする人は少なく、車検のときに交換するケースが多いようです。
とはいえ、早めに交換するに越したことはないので、気になったタイミングで確認しておくのが適切な判断といえるでしょう。交換するタイミングの目安となるチェック項目が4つあるので、ぜひご確認ください。
----使用期間
一般車両は、2~4年がブレーキフルードの寿命となる目安です。ただ、DOT5(BF-5)といった規格を使用している場合は、吸湿率が高い性質から1年おきの交換が推奨されています。
----走行距離
2~4年を経過していなくても、走行距離が1万km前後に達したときは、ブレーキフルードの交換を視野に入れましょう。走行距離が多い分、ブレーキシステムにかかる負荷も大きくなっているためです。
特に2万km以上も同じブレーキフルードを使い続けていると、故障の原因にもなりえるので、早めの交換をおすすめします。
----ブレーキフルードの色
新品のブレーキフルードは、薄い黄色や飴色をしています。黒色や濃い茶色をしているときは、ブレーキフルードが酸化によって古くなっている証拠です。「色が濁っているな」と気付いたときは、使用期間や走行距離に関係なく、ブレーキフルードを交換しましょう。
----ブレーキフルードの量
ブレーキフルードが入っているリザーバータンクには、上限・下限にそれぞれラインが記されています。ブレーキフルードの適正量は上限・下限ラインの中間です。
ボンネットを開けてタンクを確認したとき、下限ライン近くまで減っている場合は、ブレーキパッドが消耗している可能性もあります。ブレーキフルードだけではなく、ブレーキパッドのも一緒に点検・交換しましょう。
ブレーキフルードの交換方法
ブレーキフルードの交換は、オイルが充填されているリザーバータンクから、タイヤ側のブレーキパッドまですべての経路で行わなければ確実な効果は得られません。そのためにはジャッキアップしてタイヤを外す必要があります。
そしてさらに、ジャッキアップしたままの状態で作業を進め、クルマに乗り込んだ状態で「エア抜き」というブレーキペダルを踏む手順を必要とします。そのため、自分で作業する場合にはリジッドラックと呼ばれるツールや、整備工場などが備え付けているリフトと呼ばれる設備で、車体を地面から浮かせ固定された状態を作り出さなければなりません。
※リジッドラック:ジャッキで車体を持ち上げた後、車体が落ちてこないように、作業しやすい高さでしかりと固定するための道具です。
「加圧式ブリーダー」と呼ばれるツールがあれば浮いた車両に乗り込む必要がなくなりますが、商品が高額であることと作業の頻度を考えると、あまり現実的ではないでしょう。
ブレーキフルードの交換は、自分で補充などをするとかえってブレーキの効きを悪くしてしまう恐れがあり、交通事故に繋がる危険があります。必要な工具や知識、作業スペースが十分に得られないならば、ディーラーなど整備のプロフェッショナルに任せてください。
----プロに任せた方がいい理由
上記の理由だけでもすでにDIY交換はおすすめできないのですが、さらに問題なのがブレーキの故障だけでは済まない可能性が高いことです。
ABS(コンピューター制御)を搭載したクルマは特に、知識が不足したまま交換作業に入ると、思わぬトラブルを引き起こす可能性があります。ほかにもブレーキフルードがボディに付着し、長時間経過すると塗装面を痛めてしまうことも。
ブレーキフルードの交換は、あらゆる知識を持っていないと難しい作業が多いため、挑戦気分でDIY交換はしないでおきましょう。
最後に
ブレーキフルードとは、油圧式のブレーキシステムに欠かせないオイルのことをいいます。ブレーキフルードにおいて、摩擦熱に耐えられる「沸点の高さ」がブレーキを正常に動かすために欠かせないポイントです。
摩擦熱に耐えきれず気泡が発生すると、ペーパーロック現象によりブレーキが作動しなくなってしまうので、交換するタイミングを見逃さないように注意しましょう。
また、ブレーキフルードの交換は基本的に業者への依頼がおすすめです。DIY交換には、さまざまな危険がともなうため、普段から整備工場で作業をしている経験者以外は、むやみに触らないのが鉄則です。業者選びで迷ったときは、ぜひレイズにご相談ください!
新車、中古車、販売、買取のレイズ
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