梅雨は冠水に注意! 危険を避ける運転とは

2022/06/25 ブログ

 

 

ゲリラ豪雨などの異常気象の影響で、近年はクルマが水没する事故が増えています。しかし重大事故に至らなくても、ある程度の大きな水たまりを通過するだけで、クルマは大きなダメージを受けることがあります。


今回のブログでは、冠水道路を走行する際の危険性や注意点、走行後のクルマの点検ポイントなどをご紹介していきます。

 

 

 

 

 

なぜ道路が冠水してしまうのか

 


近年、ヒートアイランド現象(都市部の気温が周辺地域にくらべて異常な高温を示す現象)によるものと考えられる局地的な集中豪雨(ゲリラ豪雨とも呼ばれます)が頻繁に発生しています。


ゲリラ豪雨が起こりやすい都市部では舗装されている面積が多いため、雨水のほとんどが排水溝から下水道、貯水設備へと流入します。しかし、短時間に極端に大量の雨が降り、その処理能力の限界を超えてしまうと下水道から水があふれ出し、道路を洪水のように覆いつくしてしまいます。


冠水してしまった道路は、猛烈な風雨による視界不良とともに非常に危険な状態となります。

 

 

 

 

 

冠水した道路の危険性

 


大きな水たまりや冠水した道路を走行する場合、安全に走れるのは「水面がタイヤの高さの半分以下」の水深までだと言われています。ただし、これも大まかな基準で、水しぶきが高く上がる速度で走れば、水面よりも上の位置にまで影響が及ぶでしょう。


また、コンパクトカーやセダンのような最低地上高の低い車両と、SUVタイプのようにタイヤが大きく車高も高い車両とを比較すると、水たまりや冠水から受ける影響も異なってきます。


オフロードでの走行を前提に製造されているスズキのジムニーやトヨタのランドクルーザーなどは、特に心強いでしょう。


総じて、水面がクルマの底面に達するほどの水深であれば、そこが限界だと考えられます。それ以上だとマフラーや吸気口から泥水が流入し、クルマの重要部品に影響を及ぼしかねません。


それでも突っ切って脱出し、後に修理に出すことができればまだ良いほうですが、最悪の場合にはエンジンやラジエーターが故障して立ち往生する恐れもあります。

 

 

----水深がドアに達すると命の危険も

クルマが水の中にはまった場合、水の高さがドアの下端よりも上に来たらかなり切迫した状況です。そのまま水かさが増えないならまだ安心できますが、確証がない場合はすぐに脱出しないと命に関わります。


水の高さが上がってくると、水圧が思いのほか強くかかります。水面がドアの下端よりも上に来てさらに水かさが増すと、車内からドアを開けるのは少しずつ難しくなります。これは、スライドドアでも同じです。


そのまま水かさが増し続けて水面がタイヤよりも上に達すると、今度は車体が浮き上がるかもしれません。タイヤには気体が詰まっているので浮袋の役目を果たす形になってしまうためです。


クルマが流され車内に水が侵入し、ドアの半分ほどの高さまで来ると、内側から開けるのはほぼ不可能となります。


水たまりの水面がドアの下端を超えそうになったら、リアウインドウやドアガラスを割って車外へ脱出することを考えましょう。

 

 

 

 

 

故障のリスクが高くなる

 


水たまりや冠水道路を走行するとそれだけでクルマの故障リスクが高まりますが、具体的にどのようなメカニズムで、どういった形での故障や不具合が生じるのでしょう?


以下では、走行不能になりかねない最も危険な3つのパターンを説明します。

 

 

----エンジン

まず、エンジンの空気の取り入れ口である「吸気口」から水が入り込むことが考えられます。


吸気口は、クルマのボンネットに近い最も上部にあり、ここから取り入れた空気がガソリンと混ざることで点火・燃焼します。つまり、ガソリンを燃やしてクルマを動かすのに欠かせない装置が吸気口です。ここが浸水すると詰まってしまい、空気を取り込めなくなります。


もちろん、ちょっとした豪雨や水はね程度ならめったに詰まらない設計にはなっていますが、冠水道路は特に注意しましょう。吸気口そのものが水に浸かることは少ないものの、冠水道路での激しい水はねが原因で浸水を許すことがあります。


特に、速度を上げて大きな水しぶきを上げると、タイヤハウスからエンジンルームへと浸水し、吸気口が詰まる確率も高まります。


吸気口が詰まりさらに泥水がエンジン本体に及べば、エンジンが完全に壊れるかもしれません。


これを防ぐには、冠水状態の中では焦らずにノロノロと運転することです。

 

----マフラー

クルマは、マフラー(排気口)から浸水しても走行不能になることがあります。


マフラーはバンパーの下にあるので、水面がドアの下部やフロアにまで達したら、マフラーに浸水している可能性が大きいです。


クルマのエンジンは、ガソリンと空気を混ぜた混合気を燃焼させてクルマを動かします。この時発生したガスがマフラーによって外に排出されるものが、いわゆる排気ガスです。


排気ガスが排出されないと、空気の取り込みと燃焼がうまくいかなくなります。つまり、冠水道路でマフラーに浸水して詰まってしまうと、それが原因でエンストが起きるということです。場合によってはそのまま排気系やエンジン自体の故障にもつながります。


これを防ぐには、冠水道路では減速し、必要以上に水はねを起こさないことです。エンジンの回転数を落とさずに排気ガスを絶え間なく出し続ける方法もありますが、これをやりつつ減速するのはテクニックを要するので、まずは慌てずゆっくり脱出するようにしましょう。

 

----電気系統

「電装品」と呼ばれる電気・電子機器にとっても、水は天敵です。


漏電対策はなされていてもやはり電気系統は水に弱く、また重量物ゆえに車体の下部に設置されているものもあるので冠水時には大変不利です。


車体の下部に設置されており、冠水時にダメージを受けやすいものとしてはEVやPHEV(プラグインHV)用の大型バッテリーが挙げられます。シートの下やトランクの下に配置されていることが多いです。


こうした電装系が水に浸かって故障すると、まず電子部品のショートによって制御システムが作動し、走行不能になることがあります。それに加えてパワーウインドウや自動スライドドアが作動しなくなれば、車内からの脱出もままならなくなるでしょう。


とはいえ、水たまりや冠水した道路を通過したことが原因でクルマが故障する場合、電装系が中心に壊れることはあまり多くありません。そうなる前に吸気口やマフラーが詰まるケースが大半です。

 

 

 

 

 

冠水した道路を走行する際の注意点

 


冠水した道路は走らないことがベストな選択肢ですが、やむをえず通過する際の注意点をご紹介します。

 

 

----冠水する雨量の目安

道路が冠水する恐れがある雨脚は、強い雨によって道路面から跳ねる水しぶきが白く見え、路面の白線や横断歩道などが見えにくくなる状態です。


他に歩行者の足元が見えにくい、他車両の路面に接したタイヤの黒い側面が見えないなども目安になるでしょう。


そのようなときは、アンダーパスなどの通行は避け、できるだけ排水能力の高い幹線道路を利用することが賢明です。

 

----走行の注意点

やむをえず、冠水した道路を通行するような状況でも、クルマを道路脇に停車させ、先に進入しているクルマがどの位の高さまで水に浸かっているか? 路側帯の縁石やガードレールの浸水状態を見極めてから、「100%水没しないことを確認して」進入の決定をして下さい。


まず、幹線道路の縁石は、15cmを基準に作られているので「縁石が隠れていたら水深は20cm以上」と認識しておきます。


そして、ガードレールは、一般道のモノの場合、その中心高さが約60cmで作られているので、ガードの下の部分で道路面から60cm位と見ておけば目安になります。


つまり、ガードレールの下端に水面が触れていれば、路面の水深は60cmに達しており、進入するべきではありません。


その高さまで水が溢れている場合、マンホールが外れていたり、水の中に障害物があるなど危険を測ることができないので、安易な進入は危険ですから絶対に止めましょう。


水深が20cm以下で安全と判断されるなら、ローギヤ、または、Lレンジなど、もっとも低いギヤでエンジン回転を1500~2000回展程度に保ち、ゆっくりと一定の速度で通過するようにしましょう。


前方車両との車間は十分に開けて、万一、前のクルマが止っても回避できるゆとりを持って進入することがポイントです。


エンジン回転をある程度上げて速度を保つコツは、ブレーキをかけながら進むことです。


もっとも簡単な方法は、坂道発進の要領でパーキングブレーキを片手で引きながらアクセルは一定の量で踏み、パーキングブレーキの加減で速度を調整します。


足踏み式の場合は、軽く踏んでパーキングブレーキを引きずった状態にして、アクセルで速度調整します。


少し高度ですが、オートマチック車の場合は、左足でブレーキを踏みながらアクセルを踏んで速度を調整することもできます。


いずれもエンジン回転を少し高く維持することで、排気管から水が進入し水圧によりエンストすることを防ぐことが重要です。万一のときのために、普段少しでも練習しておくと安心です。


水深が20cmを超えると安全とはいえず、ドアの下部分から浸水する可能性も拭えないので、縁石が隠れていたら止めて、回り道を選択する、水が引くまでファミリーレストランなどの駐車場に入り待機するなど、安全策を取りましょう。

 

 

 

 

 

万一への備えとして

 


電力が落ちてパワーウインドウが開かないとき、交通事故のときの脱出、他車のけが人などを救護する際にクルマのガラスを割るための脱出用ハンマー、脱出用ポンチなどの専用工具(2千円から5千円くらい)が市販されています。


ポンチタイプは、押し付けるだけで割れるので女性の方にも使いやすくオススメ、万一の際、すぐに取り出せるようドアポケットなどに常備しておくことが肝要です。


なお、ガラスを割って脱出や救護するときは、サイドガラスのみにしましょう。サイドガラスは割れた場合、粒状に細かく砕けるため、皮膚を傷つける割合が低くなり安全です。


逆にフロントガラスは、特殊なフィルムが入っているため割れにくくなっています。また、割れた場合も破断面がとても鋭利になるので危険です。必ずサイドガラスを割って脱出して下さい。

 

 

 

 

 

冠水の恐れがある場所を把握しておく

 


近年、台風などが原因での大災害も増えてきています。予想以上の雨量で道路が冠水したり、洪水となり冠水や浸水被害でクルマが水につかってしまう恐れもあります。


大雨の予報の際には可能であれば運転を控えたいですが、難しい場合も多いため、普段から冠水の危険性のある場所は把握しておくとよいでしょう。


アンダーパスとなっている場所などは、関東地方であれば国土交通省関東地方整備局の関東地域における道路冠水注意箇所マップで紹介されています。その他の地域でも各地方自治体などから公開されている事が多いので確認しておくとよいでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

水に浸かった車体の点検

 


ここまで説明した通り、クルマが汚水に浸かってしまったら、そのクルマは全般的に様々なリスクを背負うことになります。


そのため、浸水したらすぐ業者に見てもらうのが一番なのですが、その前に不具合がないかどうか自分で点検するポイントを3つ紹介します。

 

 

----エンジン

水たまりや冠水路でクルマが水没した場合に最も気を付けなければならないのが、吸気口かマフラーから水が入り込んでエンジンに異常をきたすことです。


水没した状態から無事に抜け出してその後も異常がないように感じられても、真っ先にエンジンを点検するようにしてください。


水没後のエンジンの具合を確認する最も簡単な方法は、オイルの状態をチェックすることです。エンジンの内部に水が大量に入り込むと、水とオイルが混ざって「乳化」という現象を起こし白っぽくなります。普段レベルゲージを見慣れている方なら、この状態になっていればすぐに気付くでしょう。


ただし、それが致命的な状態であるかどうかは、最終的には専門家に判断してもらうのが得策です。


ここまで見てきた内容からも分かる通り、一度水没したクルマは、今後どのような面で不具合が生じるか分かりません。急に走行不能になったりしないうちに、専門の業者に見てもらいましょう。

 

----ブレーキ

浸水によって部品の隙間に水が入り込むと、ブレーキの効きが悪くなることもあります。水たまりや冠水道路を通過した直後は、ブレーキを数回踏んで異常がないか確認してください。


ブレーキの多くがディスクブレーキといって、露出している構造なので濡れやすく乾きやすいです。


一方、軽自動車やコンパクトカーなどで多く採用されているドラム式の場合は露出が少なくなっています。ドラム式は一度濡れると乾きにくいので、ブレーキに不具合があればすぐに修理しましょう。

 

----その他

水たまりや冠水が理由で起きる故障は、他にも様々なものがあります。例えば、台風や水害に伴って流されてきた瓦礫などが泥水の下に沈んでおり、気付かずに通過してタイヤがパンクするケースです。


また、タイヤは泥水に浸かってしまうとホイールの内部にサビが発生することがあります。そうなるとタイヤやホイールの交換が必要となる場合が出てきます。


冠水の度合いによってはブレーキローターの交換が必要となったり、ホイールが取り付けられているハブベアリングにサビの発生や異物の混入があると、走行時に異音が発生したりすることもあります。


車体が水に浸かることによる直接的な故障について前述しましたが、フロアに浸水すると、その直後は問題がなくても「湿気」で不具合が起きることもあります。


クルマのフロアの下には吸音材と呼ばれる厚いスポンジがあり、水をたっぷり吸っています。車内の温度上昇や暖房の使用により、吸音材に染み込んだ水分が蒸発すると結露が生じます。その水滴で電装系に異常をきたすこともあるので、注意しましょう。

 

 

 

 

 

最後に

 


大雨でもクルマなら大丈夫だ、と油断してはいけません。


また、「前のクルマが行けたから大丈夫だ」と思うことも危険です。もし、「大丈夫だろうか?」と判断に迷うことがあったら、そのときは無理せず、安全な場所に停車するようにしましょう。


停車するときは、周囲の状況をよく確認し、ハザードをつけることも忘れずに。安全に油断は大敵です。

 

 

 

 

 

 

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