スズキの名車「カプチーノ」復活となるか？！
スポーツカーといえば、軽量化されたボディに大きなエンジンを積み、大きな車体と優美なデザインは羨望の的とも言えます。日本でも1980年代を中心にスポーツカーの人気が高まり、各メーカーがしのぎを削って名車と呼ばれるモデルを数多く世に送り出しました。
そのなかでも異色とも言えるブームが“軽スポーツカー”と呼ばれるジャンルです。一般的にスポーツカーといえばセダンタイプほどの大きさを想像するかと思いますが、軽スポーツカーはその名の通り軽自動車タイプになっており非常に小さなボディが特徴的です。現在でもホンダ・S660やダイハツ・コペンなど幅広い世代で根強い人気があります。そのなかでも草分け的な存在がスズキ・カプチーノです。
----------軽スポーツカーの夜明け
1980年代の日本では性能だけでなく“デートカー”としてもスポーツカーの需要が高まっており、普通車ではなく軽自動車でも本格的なスポーツカーを販売するという機運が各メーカーともに高まっているという状況でした。
また“走り屋ブーム”や“ハイソカーブーム”に後押しされたこともあり、4WDのような馬力のある駆動方式やドリフト走行が可能なFF方式、車体が大きくデザイン性のあるモデル設計がなされていた日産・スカイラインGT-Rや同・シルビア、トヨタ・ソアラなどに人気が集中していました。
このような状況下で、当時の軽自動車は商用車として設計されたものが多く、各社とも走りやデザイン性を求める人を購買層として設定していませんでした。そのなかで、各メーカーに先じて軽自動車市場に打って出たのがダイハツ・ミラでした。
ダイハツ・ミラは同時期に発売されたラインナップのなかでも高性能モデルとして売り出され、ダブルバックドアにフルフラットシートという軽自動車初の機能を搭載し、直線的でオシャレなボディデザインは若者にも非常に人気がありました。
660cc規格と呼ばれる排気量規制が導入されることが決定し、550cc規格で販売する軽自動車の集大成という役割を担っていたこともあり、空冷式インタークーラーのターボエンジンを採用したことは軽自動車市場に大きな衝撃を与えました。この状況下で各社ともに軽スポーツカーに需要があると見込み、一気に軽スポーツカーの開発競争が始まりました。
----------カプチーノの前身
軽自動車をスポーツカーとすべく、1980年代は各社ともにエンジンの出力を上げることに注力していました。スポーツカーに求められる最低限のスペックとして、高出力のエンジンと軽量化された車体が挙げられます。その点、軽自動車は車体重量が軽量だったため高出力のエンジンが優先されました。しかし、軽自動車の車体はコンパクトなためスペースが必要な高出力エンジンを設置することが難しいだけでなく、価格との兼ね合いも考慮しなくてはいけませんでした。
そこで注目されたのがターボチャージャーです。過給機とも呼ばれるもので、内燃機関へ圧縮した空気を送るための仕組みです。ターボエンジンの利点として、軽自動車に使用している既存のエンジンに取り付けるだけで一気に馬力を上げられるという手軽さがあります。一方で、エンジン周りのパーツが増えるため製造工程やメンテナンスの手間が増えてしまうという難点もあります、しかし新たにエンジンを設計して製造するコストと比較するとパフォーマンスは非常に高かったのです。
こうして、前述したダイハツ・ミラやスズキ・アルトワークスなどが人気を呼んだ一方で、白熱する開発競争の結果スズキ・アルトワークスが最高出力64PSを達成した段階で自主規制を行うことになりました。
これは当時の運輸省が馬力競争の引き金になるとして、各社に意向を伝えたためとされており、2020年の現在でも軽自動車の最高出力は64PSのまま据え置きされています。
このため、スズキのアルトワークス以降の軽スポーツカーは馬力だけではなく、操作性や機能性を追求していくこととなります。
そんななか、1989年の東京モーターショーに向けてのコンセプトカーを設計していたスズキは、市販化を考えずに本格派のスポーツカーを造るという発想のもとに「U.L.W P-89」というコードネームのプロジェクトを始動させました。
この時の車両重量は450kgを目標に設定されており、カーボン製の素材をはじめとした軽量素材を多く使うなどコストを度外視した設計でした。また、ライバルのマツダ・AZ-1がガルウィングを採用するという情報を耳にしていた開発チームは、オープンカータイプにするなどライバル社と競うように完成に至りました。
そして、1989年の東京モーターショーで「P-89」として発表されるや否や盛況を呼び、市販化へと舵を切ることになったのです。
----------名車「カプチーノ」の誕生
市販化へと舵を切ったスズキは、次回の東京モーターショーまでに市販化することを決意しました。しかし、排ガス規制の緩和により軽自動車も550ccから600ccへと排気量が引き上げられると車体サイズも一回り大きく変更されてしまいました。完成までに残された時間としてはわずか1年半ほどでしたが、エンジンやバッテリーの配置変更により理想的な50：50の車両重量バランスへと近づけることに成功しています。そして、1991年に無事に販売へとこぎつけました。
軽スポーツカー初の“ライトウエイトFRスポーツカー”として脚光を浴びたカプチーノの装備は、本格的なスポーツカーと呼ぶのに十分なものでした。とくに目を惹いたのが、当時としては珍しい開閉式のメタルルーフです。このメタルルーフは「フルオープン」「タルガトップ」「Tバールーフ」と3つのスタイルを楽しめる前代未聞の設計になっていました。また、スズキ・アルトワークスから継承しているターボエンジンを縦向きにフロントミッドシップに配置するなど、細部まで徹底した造りがファンだけではなく多くの若者の心を掴みました。
こうして、同世代の人気車種マツダ・AZ-1やホンダ・ビートとともに“ABCトリオ”として親しまれ、現在では世界中に熱狂的なファンがいるまでの名車となったのです。
----------カプチーノに復活の兆し？！
カプチーノは非常に成功したモデルといえますが、バブル崩壊の波にあおられカプチーノ以降スズキから軽スポーツカーが販売されることはありませんでした。それゆえに、世界中のファンからは再販や新モデルを希望する声が多くあがっています。
そんななか、2020年を目標にカプチーノが復活するのではないか？という予想が各紙から発表されており、インターネット上でも話題をよんでいます。もちろん、オフィシャルな情報ではないので憶測の域を出ませんが、ホンダ・ビートはS660として生まれ変わって成功を収めており、このことが追い風となって新型カプチーノの開発が進んでいるのではないか・・とにわかに期待されているのです。
エンジンはアルトワークスからの流用か
新型カプチーノはアルトワークスの現行モデルが搭載している“RA06A型直列3気筒DOHCインタークーラーターボエンジン”を流用する可能性が高いと思われます。このエンジンはパワフルな走行性能が魅力となっています。
初代カプチーノは、同時期に発売されていたアルトワークスが搭載していたエンジンなどを流用していました。1995年に実施したマイナーチェンジで誕生したモデルも、同様にアルトワークスのパワートレインを共有していました。そのため、開発の効率化などをはかるため新型カプチーノも過去の例と同様にアルトワークスが搭載するエンジンなどを流用する見込みです。
初代カプチーノはFR駆動を採用していましたが、新型モデルはアルトワークスの現行モデルに合わせてFF/4WD駆動へと切り替えられる可能性が高いです。
新型カプチーノ予想スペック
| 全長 | 3,395mm |
|---|---|
| 全幅 | 1,475mm |
| 全高 | 1,190mm |
| 車両重量 | 660kg |
| エンジン | RA6A型直列3気筒DOHCインタークーラーターボエンジン |
| 最大出力 | 47kW/6,000rpm |
| 最大トルク | 100Nm/3,000rpm |
| トランスミッション | 5MT/5AGS |
| 駆動方式 | FF/4WD |
アクティブトップ採用でレトロな雰囲気のエクステリア
新型カプチーノは、運転席にいながら簡単にルーフを開閉できるアクティブトップを採用する見込みです。初代カプチーノは取り外してトランクに格納する3ピース構成のルーフを採用していました。
メリットもありましたが、取り外しや取り付けが面倒であったり、雨風に弱いというデメリットもありました。
アクティブトップを採用する新型モデルは電動ルーフを格納するスペースをリアに設計する必要が生じるため、先代モデルが実現していたロングノーズ・ショートデッキのフォルムには多少の影響が及ぶと考えられます。
スズキ車のエクステリアのトレンドは“レトロ感”です。新型カプチーノはヘッドライトはスイフトのようにシャープな形状とする前後のフェンダーによって立体感を加えながらも、レトロ感を追求して魅力的なエクステリアを完成させるものと期待します。
「HEARTECT(ハーテクト)」を採用か
復活が期待されるカプチーノは、スズキの新プラットフォーム「HEARTECT」を採用してさらなる軽量化を実現させる見込みです。
8代目アルトシリーズやワゴンRなどのスズキ車に導入されたハーテクトは理想的な骨格構造を実現させる、部品の見直しや最適配置を行うことで、剛性強化とボディの軽量化を両立させるプラットフォームです。
先代モデルの車両重量は700kgと、ライトウエイトスポーツカーとしては魅力的な数値をクリアしていましたが、先に導入されたスズキ車と同様にハーテクトを採用すればさらなる軽量化の実現に期待が持てます。
ライバル車以上の低燃費を目指す
ハーテクトの採用で軽量化を図り、ライバル車であるコペン以上の低燃費を目指すであろうと考えられます。
パワートレインを共有すると考えられているアルトワークスの現行モデル(2WD/5AGS)はJC08モードで23.6km/Lの燃費を実現しています。
ハーテクトを導入したアルトワークスの車両重量は690kgです。2シーターオープンカーのカプチーノが同プラットフォームを採用すると、それ以下の車両重量を達成できるはずです。
新型カプチーノは、燃費面も優れたスポーツカーであることをアピールするために、ライバル車であるコペンの25.2km/Lを上回る低燃費の実現を目指すと思われます。
スズキの予防安全技術も搭載か
新型カプチーノは、ライバル車の動向を意識して「デュアルセンサーブレーキサポート」などのスズキの予防安全技術を導入する可能性が高いと思います。
カプチーノのライバル車であるコペンやS660は次期マイナーチェンジで「スマートアシスト3」や「ホンダセンシング」を搭載する見込みです。先行するライバル車を意識する新型カプチーノは、先進の予防安全技術を搭載して商品力を強化するはずです。
価格帯はどのあたりなのか
新型カプチーノのベースグレードの販売価格は、コペンやS660と同様に200万円以下に設定すると考えます。
200万円以下でオープンカーでのスポーツ走行を楽しめるという価格のインパクトはとても大きいのではないかと思います。
標準装備や内外装にこだわる上級グレードの販売価格の上限値は250万円ほどではないかと予想します。
販売価格比較表
| 新型カプチーノ | 190～250万円(予想値) |
|---|---|
| コペン | 185～207万円 |
| S660 | 198～285万円 |
初代カプチーノが販売されていた時代には、軽スポーツオープンカー市場は今以上に勢いがありました。カプチーノは、同時期に販売されていたAZ-1やビートとともに軽自動車のスポーツオープンカー市場を盛り上げていました。
バブルが崩壊し、軽自動車規格が見直されたことで軽スポーツカー市場は衰退していきましたが、ビートの後継モデルにあたるS660が2015年3月に誕生するなどライトウエイトスポーツカー市場はかつての勢いを取り戻しつつあります。
走行性に加えて安全性や環境性能も魅力的な新型カプチーノが誕生すれば、軽スポーツオープンカー市場はさらに活性化していくことでしょう。
