根強い人気のジムニーの特徴
ジムニーはスズキ自動車が発売している本格的なクロスカントリー車(オフロード車)です。
強固な車体や極限状態でも信頼性の高いメカニズムと、小型軽量な車体の両立は、日本の狭くて急峻な林道は勿論のこと、世界レベルでも他に比肩するもののない、非常に高い悪路走破性を持っています。
ジムニーは海外へ輸出、あるいは海外でも生産されていますが、仕向地によってはサムライという名前で販売されています、そのタフさや機動性の高さは、まさに戦国時代に野山を縦横に駆けた野武士たちを体現したものだと言えます。
強固なラダーフレーム
まずジムニーの特徴として見逃せないのは、伝統のラダーフレームです。
一般的なモノコックの車体を持つ自動車の場合、車体にかかる応力は車体全体が受け持ちますが、ラダーフレームでは梯子状のフレームが受け持ち、上屋根の部分には負荷がかからない構造でオフロードでの酷使に最適な設計となっています。
例えば横転してボディを大きく凹ませた場合、一般的なモノコックの自動車では車体強度に大きな影響が及び、最悪の場合は廃車にせざるを得ません。
ジムニーは強固なラダーフレームに影響が出ていなければ(実際に滅多に影響が出ることはありません)
大きく凹んだままでも普通に走行することが出来ますし、ボディパネルの一部を交換したりすることで、横転前と同じ状態にリセットすることも出来るのです。
もちろん横転する様な極限状態でのオフロード走行を行わずとも、ジムニーの車体の丈夫さは日常使いでも大きなメリットとなります。
錆にさえ気をつければ、長く乗ることが出来るでしょう。
リジットサス
次にジムニーの特徴として挙げたいのが、リジットアクスルサスペンションです。
最近の多くの自動車は、左右のサスペンションが独立して動くようになっているのですが、ジムニーではあえて左右の車輪が車軸で直結した構造であるリジットアクスルサスペンションが選ばれています。
このようなリジットアクスルサスペンションは左の車輪が凸凹を超えれば右の車輪にも影響が出るなど、乗り心地の面では非常に不利です。
またバネ下重量も重くなるので、これも乗り心地に悪影響を及ぼします。
例えば高速道路の路面のうねりなどでは、大の苦手科目です。
一方でリジットアクスルサスペンションは、ストロークの量を非常に大きく取ることが出来ます。
ですからクロスカントリー走行や、特にモーグル地形を超えていく場合、この構造は必須となります。
ジムニーがオフロード走行を最優先しているということが分かります。
とはいえ販売中のジムニーは、スプリングをJA11以前のリーフスプリング(板バネ)から、乗用車では一般的なコイルスプリングに改められており、舗装路での乗り心地にも配慮されています。
パートタイム4WD
殆どの4輪駆動車はフルタイム4WDが採用されています。これは常に4輪に動力を伝達して、不整路や雪道に留まらず、雨の市街地でも、晴れの高速道路でも、安定した走行を実現するための装備です。
このようなフルタイム4WDは、状況に応じて各車輪に動力を分配するための機構が付いているのが特徴です。
一方でジムニーが採用しているのは、フルタイム4WD以前に主流だったパートタイム4WDです。これは通常時は後輪駆動車として走行して、必要になった場合はスイッチで4WDに切り替えるというものです。
この4WD走行時、前後輪の間は直結されるので、動力は前輪5割、後輪5割で固定されます。動力の分配機構は持たないので、原則として舗装路などで4WDを使うことは出来ません。
前後輪の回転の差分を吸収出来ないので、ハンドルを大きく切ると動けなくなる、タイトコーナーブレーキング現象が起こってしまうのです。
このようなデメリットを承知でジムニーがパートタイム4WDを継続しているのは、何よりもオフロード走行を重視しているからです。
フルタイム4WDの動力分配機構は、不整路で車輪が1輪だけ浮いた場合、この浮いてしまった車輪に負荷がかかっていないことから
動力が優先的に分配されてしまい、浮いている1輪だけが空転して残りは動かないという状況を招きます。
ジムニーの場合、例えば前の右タイヤが浮いたとしても、後輪へ伝わる動力は変わらないので、後ろから押し出して前に進むことが出来るというわけです。但しジムニーは、基本的に全ての自動車に備わる左右の車輪の回転差を吸収するためのデフギアの、機能を停止する装備は付いていません。
従って、右前輪と左後輪といった感じで対角線に車輪が浮いてしまうと、浮いた車輪だけが空転して前に進めなくなる場合があります。
リジッドサスの恩恵でこんな状況になるのは稀ですが、このような状況のために空転を抑えて設置している車輪に動力が伝わるようにするLSDを追加するオーナーもいます。
副変速機
ジムニーには副変速機が搭載されています。
スイッチを切り替えることで、ジムニーのファイナルギア比は1.320から2.643になります。
イメージとしては、同じエンジン回転数で走ったとき、副変速機をロー側にしておくとジムニーの速度は半分に、代わりに伝わる力は2倍になるといった感じです。
この副変速機のおかげで、ジムニーは980kgの車体に64馬力のエンジンという一見非力そうな構成ながら、 驚くべき力を発揮するのです。
燃費性能
オフロードを優先してきたジムニーなので、燃費性能は最新の軽自動車や小型乗用車と比べると犠牲になっています。
軽モデルの場合、実燃費はオーナーのブログやSNSなどでは12~13km/Lという報告が多いようです。
これは決して良い数値ではありませんが、 カタログ燃費はMT車で14.8km/L、AT車で13.6km/Lなので、カタログ燃費と実燃費との差異はそれほど大きくありません。
最新エコカーのような、カタログ燃費の70%走ればいいほうだということはないので、これは安心できる要素です。とはいえ市街地でしか乗らないならば、ジムニーは実燃費の悪さばかりが目立ってしまうことになります。
また、ジムニーの実燃費は走り方によって大きく変わります。特に苦手科目は高速走行で、空気抵抗の大きな決して軽くない車体、 高速走行に必ずしも最適化されていないギア比は、いずれも燃費の面で著しく不利になります。従って高速をハイペースで飛ばした場合、ジムニーの燃費は特に軽モデルの場合、10km/Lを下回ってしまうことも珍しくありません。
とはいえ、一昔前の軽自動車の規制速度の80km/L程度で控えめに走れば、ジムニーの燃費は大分改善します。長距離移動の場合は、追い越し車線の利用は最低限に留め、大型車などをペースメーカーに走れば、意外と経済的な移動が出来るかもしれません。
ジムニーの欠点
乗り心地が悪い
頑丈さを特化させるために乗り心地はほぼ無視してあります。
人を乗せて走るのが申し訳ないほどに揺れます(笑)購入費用は若干高め
販売価格は軽の中では高めです。ただし値段にはそれ相応の 理由があるという点だけ留意して頂ければ。人気車ですしね。
高速道路はムリ
最近の軽自動車は優秀で、100km/hくらいまではそれなりにスムーズに出ます。でもジムニーは80km/hくらいからエンジンが唸りだします。一昔前の3速ATの軽自動車のように騒がしいです。
狭い
一応4人乗りですが、ほぼ2人乗りと思った方が無難です。
後部座席を倒せばそこそこ物は積めますが、それでも狭い部類です。ルーフキャリアが積める点が利点ではありますが。
転がる
乗っていた方の話を聞くと「よく転がる」とのお話。つまり横転しやすいって話らしいです。車高が高いからでしょうかね。でも無茶な運転さえしなければ何も問題ありません。
静寂性は期待しないで
防音性能は高くありません。
重い
構造上しかたないんですが、一般的な軽自動車に比べるとジムニーは200kgほど重いつくりになっています。
ジムニーの魅力や愛され続ける理由
発売から19年の現行モデルは今でも魅力が満載です
1998年に新型へ生まれ変わってから、その後の19年にわたってフルモデルチェンジなしに作り続けている日本車があります。 スズキの軽自動車『ジムニー』です。1970年からスズキが販売しているSUV(スポーツ多目的車) タイプの4輪駆動車で、現行モデルは3代目にあたります。もともとサイクルは長めの車種とはいえ、どんどん 最新技術が出てきたこの数十年にわたって同じモデルというのは、やはり異例といえるでしょう。
しかもジムニーは、ただ販売され続けているのではなく根強い人気に支えられています。 スズキは、多少の悪路なら走破可能なクロスオーバータイプの軽自動車「ハスラー」を発売しました。 ハスラーは多い月には1万台以上を売り上げるヒット車になりました。 これがジムニーの客層を奪ったのか、というとそんな事はなく、ジムニーは月販1000台程度の販売を着々と続けています。 目立つ台数ではないですが、発売から20年近くが経過している車として考えると十分な実績です。
2015年に開催された第44回東京モーターショーもそうでした。 魅力的なコンセプトカーや市販予定車が数多く並んだスズキのブースに現行ジムニーが堂々と展示され、 そのジムニーの周囲には人が絶えませんでした。老若男女、幅広い層から注目されていることが分かります。
最近は東京都内でもカスタム(改造)を施してあるジムニーの姿をよく見かけます。 ジムニーはなぜここまで永く愛され続けるのか・・その理由を探りたいと思います。
都内の専門店によれば「東京は地方に比べればジムニーの台数は少ないですが、昔のディーゼルエンジンを積んだSUVが都の規制で 乗れなくなったので、ジムニーに乗り換えたという例はあります。大雪や洪水など万が一を考えて選ぶ方もいます。 街乗りで使う方が増えたのは、現行モデルの3代目になって2代目以前より快適性が高まったことが大きいですね。」
ジムニーは趣味で乗る人が多いこともあり、カスタム比率は高いそうです。その流れを後押ししているのが、 納車時に複数のカスタムパーツを装着して販売されるコンプリートカーです。自分でパーツを選び取り付ける には専門知識が必要ですが、コンプリートカーなら専門店にお任せできるので人気が高まっているようです。
コンプリートカーは見るからに悪路に強そうです、しかしオフロード走行を楽しむユーザーは一部だと言います。 釣りや登山、狩猟の足として選んでる人もいますが、多くはアウトドアスタイルを楽しみながら 街乗りに使うユーザーです。それならノーマルでもよさそうですが・・ ジムニーには放っておけない魅力があるんです、それが【いじりやすさ】です。
「自転車みたいな存在なんです。エンジンのスロットル制御がいまだにワイヤーだったり、サスペンションは 前後ともリジットアクスルだったり、作りがシンプルで電子制御をほとんど使っていないので自由に パーツを変えることが出来る。アルミホイールの品揃えなど、昔より増えているぐらいです。」
こちらのお店ではハスラーのコンプリートカーやカスタムパーツも扱っていますが、ジムニーとは対照的に ほとんどでないと言います。ハスラーのユーザーは内外装のドレスアップがメインで、多くはディーラーで メーカー純正品を選んでいくと言います。ジムニーとの客層の違いがうかがえますね。
一方で、地方ではどうでしょうか。
静岡県の専門店にお話を伺うと、返ってきたのは実用車としての性能の話でした。
「御殿場は岩手県と同じくらい雪が降ります。鉄道は30分に1本くらいなので通勤は車になりますが、 乗用車タイプの4WDでは大雪の時は走れません。その点ジムニーは最低地上高がたっぷりしているし、 大径タイヤでローレンジも備わっているので安心です。」
ジムニーを選ぶのはやはり男性が中心だと言いますが、奥さんがミニバンで旦那さんがジムニーという家庭もあるそうです。 オフロード走行を楽しむ人も多いですが、状況によっては奥さんもジムニーに乗るので、7割はATだそうです。
「もうひとつ特徴的なのは、1台のクルマに10年以上乗る方が多いことです。ボディと別体の頑丈な ラダーフレームを使っているので、ボディやエンジンを簡単に積み替えることができます。 壊れたら買い替えるのではなく、直しながら乗り続けるクルマなのです。」
ジムニーはライフサイクルも長く、1970年代に初代が登場してから2回(1981年と1998年)しかモデルチェンジをしていません。 しかし、2001年に世界累計販売台数200万台を記録したという数字は、2004年から9年9ヶ月で同400万台を 達成したスズキのコンパクトカー、スイフトと比べるとかなり少なく思えます。
スズキといえば、コストダウンを徹底する企業として知られています。そんなスズキが、ジムニーの存在を なぜ許しているのか、不思議に思うかもしれません。しかし、ジムニーの生みの親は40年近くこの会社の陣頭指揮を とってきたあの人、そう鈴木修会長なのです。
現在もスズキの会長を務める鈴木修氏は、1968年からの数年間、東京に駐在していました。 この時、東京の軽自動車メーカーのホープ自動車創業者である小野定良氏との交流が生まれました。 同社では軽自動車初の4輪駆動車ホープスターON360を1967年に開発しましたが、価格がスズキの軽自動車の 2倍であり、販売網も貧弱で売れなかったといいます。
そこで鈴木氏は小野氏と交渉し、製造権を譲渡してもらうと、自社製エンジンを積み、独自のデザインを与え、 社名をジープとミニを掛け合わせた『ジムニー』として、1970年に発売しました。 ジムニーはデビュー直後から着実に売れました。狭い日本の山間部での生活や作業にうってつけだったのです。
ホープ自動車はON360を最後に自動車事業から撤退し、社名をホープに変え児童アミューズメントマシンに専念しました。 現在では、この分野で80%を超える圧倒的なシェアを誇ります。 スズキのその後については改めて記す必要もないでしょう。
ジムニーは誕生以来、ラダーフレーム・前後リジット式サスペンション・ローレンジ付きパートタイム4WDという 基本設計を軽自動車サイズと共に守り抜いてきました。その間SUVの世界は乗用車化が進み、 日本で売られる国産SUVでこの設計を守り続けるのはジムニーだけとなりました。
一部で噂になっている次期型ジムニーも、この基本設計を踏襲すると言われています。 その頑なさが生活の足として、趣味の相棒として、カスタムの素材としてオンリーワンの存在となっている理由でしょう。 しかもそれが、新車でも150万円以下で買える。愛され続けて当然である、としか言いようがありません。