ジムニー カスタム人気の裏側
2020年1月10日~12日に幕張メッセで開催された東京オートサロン。
昔と比べて出展車種のジャンルが増えており、スポーツモデル中心であった頃とは違い今ではSUVやワンボックスが多くなり輸入車も目立つようになりました。
そのなかでもスズキ ジムニー/シエラの台数は圧巻であり、ざっと数えても20台以上はあろうかというほどでした。
そんな現状のなか、こんな記事が目につきました・・・
ジムニーは話題性が高いためほとんどの人が興味本位で反応しているだけで実際の需要はほとんどない❔
「ジムニーが人気と言われるが、ジムニーを実際にカスタムする人は少ないようだ」という内容の記事が公開されました。
これは東京オートサロン2020の展示において、ジムニーをはじめとするSUVのオフロード系カスタムが多く、会場では大きな反響を(展示するショップ側も)感じ取ったのに対し、実際には(カスタム用品の)売り上げに結びついていない、というところに着目したものでした。
オフロードタイヤを発売しているTOYOタイヤ、そのほかオフロード系カスタムを行っているショップについても「来場者の、ジムニーをはじめとするSUVカスタムに対する興味の強さには驚いている」とのことで、オートサロン開催側も「SUV系のカスタムのみを集めた専用会場の設置」を企画しているほどだとも言われています。
こういった状況にも関わらず「カスタム市場がさほど盛り上がっていないように見える」というのも不思議な話ですね。
SUV愛好者にとってはもはや「クルマが主役ではない」
まず、記事ではいくつかの関係者による証言として「SUVカスタムにおいて、ヘビーデューティーな香りを取り入れる方向に動いているのは間違いない」と述べているが「あくまでもユーザーは本物ではなく香りを求めているだけだ」とも強調しています。
そのほかこういったSUV、特にジムニーのカスタムに興味を示す人々はオシャレな人が多いということにも触れられており、現在のアウトドアブームやアウトドアファッション人気とのつながりについて指摘しています。
これらを鑑みて、ジムニーやジムニーのカスタムに興味を示す人々はジムニーが好きだったり、ジムニーをカスタムしたいわではなく、自身が描いた「アウトドアライフ」という大きな絵の中にジムニーもしくはカスタムされたジムニーがあれば“よりよい絵になる”ということなのかもしれません。
つまりジムニーはクルマというよりも、キャンプに使用するオシャレな焚き火台やテーブルと同じツールであり、そのオシャレ感を演出するための小物であるとも考えられます。
要は「ジムニーをクルマとして捉えているわけではない」とも言い換えられるかもしれません。
やはりクルマは「モノ」から「コト」へ
こういった傾向は、よく言われる「モノからコト消費」ということになり、ジムニーというハードウエアではなく、ジムニーの持つイメージやそれらが自分に与えてくれる充足感というソフトウエアが重視されていると考えられ、もっと大きなところでは「オフロードを走らないのにSUVに乗る」ということ自体がこういった傾向を示唆していたのだとも考えられます。
ただ、これはSUVに限らず「目立つから」「ステータスが感じられるから」「アピールできるから」というような理由で、スポーツ走行しなくてもスーパーカーを購入する人が(現代では)ほとんどであったり、そもそもダイビングをしない人々にもダイバーズウォッチが大人気という現状も同じなのかもしれませんね。
そしてこういった傾向がSNSの普及、そしてSNSによる自己アピールなど承認欲求充足といったところと結びつきさらに「モノからコト」が加速したと言えます。
もちろん、本当にジムニーが好きな人、ジムニーの性質をよく理解し自身の用途に合った現実的なカスタムを施す人も多いかとは思いますが、それを上回る数の人々が「ファッションアイテムとして、そして自己表現の一つとしてジムニーを位置付けている」のだと思います。
消費者の反響は鵜呑みにできない
そして、そこが「いかに反響があっても、それが売れるとは限らない」という現象であり、記事においても関係者の言葉として「普段あまり見たことないクルマだから新鮮味があってウケている感じです。実際、展示してもビジネスと反響の大きさは比例しません」というものを紹介していますが、実際のところこれが全てなのかもしれませんね。
※過去にダイハツはミュゼット2のコンセプトモデルの反響が大きく、これに応える形で販売したものの実際にはあまり売れなかった
珍しいもの、見たことがないものだからいち早くSNSにアップすればいいね!がもらえるという心理がそこに働き、拡散によって反響が雪だるま式に大きくなるのだと思われますが、そこに実際の需要はないのかもしれません。
ただし、そういった状況のなかでも一部の人々がジムニーのカスタムカーに現実的な興味を示しているのも事実です。
しかし、これまでの「ジムニーのカスタムを行ってきた人々」とはあまりにも異なる現代のジムニー購入層/ジムニーカスタム予備軍にとって、チューニング/カスタムショップに足を踏み入れるのはあまりにもハードルが高いのかもしれません。
加えて、クルマを「コトではなくモノ」として捉えてきたチューニング/カスタムショップにとってもこうした新しい客層についてはまだまだ理解が及ばないところがあるのかもしれません。
そこで現代のジムニー購入層/ジムニーカスタム予備軍がジムニーをファッションとして、そしてアウトドアアイテムの一つとして考えてるのであれば、ファッション系ショップやアウトドアショップとのコラボレーションにてジムニーのカスタムをPRした方がいいんじゃないかなぁと思ったりもします。
実際のところ、アウトドアブランドとファッションブランドのコラボは日常茶飯事ですし、SUVとアウトドアブランドのコラボもいくつか見られます。
今後はこういった客層の変化に対応したクルマの売り方、カスタムの提案が必要なのかもしれません。