ジムニーが堅持する ボールナット式ステアリング
クルマのメカニズムは、まさに日進月歩のペースで発展しています。
そのなかで、ふと見渡してみるとかつては中心的存在だったメカニズムが今ではごく少数派になっている例を目にすることもあります。
ステアリング機構を構成するパーツのなかで、時代の変化を反映してるものがギヤボックスの形式です。
現在、ほとんどの乗用車のステアリング(ハンドルの回転をステアリングシャフトにつなげる機構)は、ラック&ピニオン式になります。
ステアリングシャフトの先端にピニオンギアを設け、歯切りした平板(ラック)と噛み合わせ、ステアリングの円運動を平板の左右運動に変え、その動きをタイロッドを介してステアリング・ナックルアームに伝えることで、前輪に舵角を与えるギアボックスです。
長所は、力の変換方式から生じるステアリングのダイレクト感、バックラッシュが少ないことも操作感の向上につながり、構造がシンプルであること、コストを抑えることができること、などが挙げられます。一方、短所としては、操舵力が重くなりがちなこと、前輪からの衝撃を直接ステアリングホイールまでフィードバックしてしまうこと(キックバック)などがあります。
こうした長短を考えると、ラック&ピニオンは舗装路向き、スポーツカーやレーシングカーに向くギヤボックスであることが理解できるものの、操舵力の点から普及に時間を要したギヤボックス形式でもあり、この問題を解決したのが、パワーステアリング機構の実用化で、パワーステアリングの一般化とともに急速に装着例が増えた方式なのです。
しかしジムニーは初代からボールベアリングを使う「ボールナット式」を堅持しています。
ジムニーのボンネットを開けると、エンジン、バッテリーなどの心臓部はかなり高い場所に設置されているのが分かります。ジムニーはオフロード走行時に川の中などを進む可能性もあります。位置を高くすることで水没などの可能性を下げ、過酷な環境での信頼性を高めているのです。
ボール・ナット(ball nut)とは歯車の一種で、回転力を直線の動きに変換します。リサーキュレーティング・ボール(recirculating ball)またはウォーム・アンド・セクター(worm and sector)と呼ばれることもあります。
現在ではラック・アンド・ピニオンに取って代わられた機構ですが、ハンドルが軽く、路面の凹凸によるキックバックを運転手に伝えにくい、耐久性も高いというメリットがあるため、初期のパワーステアリング機構やトラックなどで一般的に使用されてきました。
反対にステアリングの戻りが悪くダイレクト感に欠けるため、ラックアンドピニオン式に比べるとスポーツ走行等での操舵性は劣るというデメリットがあります。
現在、このボール・ナット方式を使う車両はきわめてまれで、本格的オフロード走行を想定したスズキ・ジムニーがその代表格といえるでしょう。
以前は、メルセデス・ベンツのGクラス(ゲレンデバーゲン)やジープ・チェロキーなどでも使われていましたが、フロントアクスルの形式を独立懸架方式に変えたこと(Gクラスはタブルウイッシュボーン、チェロキーはストラット)で、それぞれステアリング・ギヤボックス形式もラック&ピニオン方式へと変更されています。
逆に言えば、ボール・ナット方式は、フロント・リジッドアクスル方式と相性がよい方式ということもできでしょう。ちなみに、フロント・リジッドアクスル方式の長所は、路面の凹凸変化が激しい不整地路で、左右両輪に最大効率で駆動力を伝えられる点にあり、舗装路よりもオフロードに重点を置いた車軸形式と言えます。しかし、不整地走行を重視する車両でも、前輪独立懸架+ラック&ピニオンのギヤボックス設定が増えているのが現状です。
もちろん、リジッドアクスル方式とはいっても、大型商用車を除いてさすがにリーフリジッド方式を目にすることはなく、ほぼ100%コイル/リンク・リジッド方式が主力となっているため、ジムニーのように本格的クロカン4WDを目指す車両が、依然としてフロント・リジッドアクスル+ボール・ナット方式のステアリング・ギヤボックスを採用し続ける例は、世界的にもまれな例となっている。
ボールナット式ステアリングは「絶滅危惧種」です。
乗用車の新車で採用されているのは、世界的に見ても、たぶんスズキのジムニー/ジムニーシエラだけかもしれません。
中古で購入できるものも含めれば、メルセデスベンツ・クライスラー・ゼネラルモーターズなどの一部車種(ジープラングラーなど)がありますが、他はほぼ存在しません。
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